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『 Jiko和尚の語り 法話3 』

身震いするほど感動した、お話を御紹介致します。
説法者は千葉県成田市の長寿院 篠原鋭一 御住職。24時間の命の電話を開設。これが、人心救済の現場です。なまの人の生きざまを知ってください。(興山舎さん同意済み)


お母さん待って!


「離婚届に署名してください。」
家庭内暴力が社会問題となって久しい。半年前のことである。N子さんが涙を流しながら訴えた。「もう耐えられません。私に対する暴力がとうとう子供にまで・・・・。主人が狂ってしまいました。子供をつれて出て行こうと思います。住職さん、逃げてもいいですよね。暴力から逃げるんですから、夫を捨てることを許されますよね。」
夫O氏四十歳。N子さん三十八歳。小学生の男子C君。幼稚園の女の子M子ちゃんの四人家族。O氏の家庭内暴力が始まって三年が経つ。商社マンから独立して新会社を設立したものの、大手商社の名刺に守られていた時とは違い、今までの取引先は冷たい。倒産の日は短期でやってきた。
O氏の家庭内暴力が始まったのは、この頃のことである。酒乱癖はなかった。けれども追いつめられて毎夜の深酒が酒乱状態をよび、N子さんに罵声を浴びせて殴る蹴るの日々が続く。ある日のこと。深夜に帰宅したO氏が怒鳴りちらした。
「オレはまだ晩飯、喰ってねえんだ。てめえたちだけでウメエもん喰いやがってこの野郎!」言いざまN子さんの襟首をつかんで床にたたきつけたのである。うずくまって頭をかかえるN子さんに再びO氏の手がかかった時、C君がその手にしがみついて叫んだ。
「お父さん!お母さんをいじめないで!殴りたいんだったらボクをお母さんの代わりに殴っていいよ。お母さんを殴るのはやめて!」N子さんが立ち上がって叫ぶ。
「ダメ。子供に暴力はダメ!さあ、私を殴りなさい。死ぬほど殴っていい。子供はやめて!」
幼いM子ちゃんが激しく泣いている。「こわいよー!こわいよー!」その夜、母と子は部屋にカギをかけて同じベッドで一夜を過ごしました。
次の日もO氏の暴力は止まらない。数日後、N子さんが告げた。
「離婚届に署名してください。もう限界です。この子たちをつれて出て行きます。このままだとあなたに殺されてしまいますから・・・・。警察に訴えようかと考えましたが、あなたの人生に傷がつくと思いやめました。すぐに別れましょう」沈黙の時が流れた。
酒気の切れたO氏は静かだ。やがてO氏がポツリと言った。「オレを捨てて出ていくのか?」
「もうあなたについていけません」「子供もつれていくのか?」「子供たち、恐怖で口数も少なくなりました。とてもおきていけません・・・・」その日、O氏の暴力はなかった。離婚届に署名押印もない。けれどもそれから三日目には再び激しい罵声と共にO氏が暴れまくった。「オレを捨てるだと!オレのどこが悪いんだ。この家も建てた。おまえたちを養っている。会社の倒産なんぞ怖くもなんともねえ。いいだろう!子供をおいてお前だけ出て行け。それなら今すぐに離婚届にハン押してやらあ!」
N子さんは暴力に耐えながら思った。「とにかく、私だけ出て行こう。子供は後で迎えにくればいい・・・」N子さんの手に力がこもる。ドーン。大きな音と共にO氏が床に倒れていった。その瞬間、N子さんは自家用車のキーを手に外へ飛び出した。


「お父さんを捨てないで!」
外は暗い。車庫に入ったN子さんは急いで運転席に座り、エンジンをかける。ふとC君とM子ちゃんのことが頭によぎった。自分に言い聞かせる。「今はこうするしかない!」ライトをつける。その時である。ライトに浮かび上がったのが大きく両手を広げて"とうせんぼ"をしているC君とM子ちゃんの姿だ。
車から飛び出したN子さんに二人が飛びかかるようにして抱きつくと、かわるがわる訴えた。
「お母さん待って!いかないで!」「お母さん、お父さんを捨てないで!」C君が泣きじゃくりながら告げる。「お母さん、お父さんは病気だよ。病気がなおれば、前のようにやさしいお父さんになるんだ!お母さん、ボクたち家族だよ。別々になったら、家族じゃない!」M子ちゃんも大声で泣きながら言う。
「わたし、お父さん、大好きだよ。怖くなんかないよ。お母さん、お父さんと一諸にいて!おねがいだから・・・・」
この時、玄関の陰にうずくまって号泣しているO氏に気付いた三人が、O氏に抱きついてその名を呼んだ。
「お父さん、お父さん、お父さん!」この日、N子さんの苦悩の日々に終止符が打たれた。夫の暴力も消えた。家族を離散から救ったのは、まぎれもなく。二人の仏の子である。

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